膝関節の異常
膝関節は大腿骨と脛骨、膝蓋骨の3つの骨からなり、横から見ると平たい脛骨の上に丸い大腿骨が乗っている形をしています。
膝は体重をしっかり支えなければならない関節にも関わらず、不安定な形状をしているため、安定性を持たせるために存在する骨と骨とを繋ぐ靭帯は非常に重要な役割を果たしています。
膝の靭帯は4つあり、左右の側方向の安定を受け持っているのが側副靭帯で、内側と外側に位置します。
前十字靭帯は前方向へのすべりと捻じれを防ぎ、後十字靭帯は後方向へのすべりと膝の反り返りを防いでいるので、膝の中で複数のゴムバンドで繋いでいるような構造になります。
また、半月板も発達しており、大腿骨と脛骨の間で上手く体重を分散させるクッションのような働きや関節の適合性を良くする役割があります。
膝関節は体重を足関節へと伝える中継地点の役割をしていますので、腰部・骨盤や股間節、足関節の問題でも二次的な問題が起こることがあります。
変形性膝関節症
膝の骨や軟骨に慢性の退行性変性(老化)や増殖性変化が起こり、膝関節に関節変化や機能障害を起こすのが、変形性膝関節症です。
半月板や周囲の軟骨が長期間に少しずつストレスを受け変形するもの(一次性)と関節リウマチや膝の外傷、痛風など他の原因によって引き起こされるもの(二次性)があります。
症状として、初期は階段の昇降時や正座、かがむ姿勢で膝に痛みが出現し、安静時は痛みが出現しません。また、膝の内側に症状を訴えることが多く、同部位に圧痛を伴うこともあります。進行するにつれて起床時のこわばり、膝の曲げ伸ばしに制限が出るようになります。関節炎により、過剰な関節液が膝に水が溜まる膝関節水症が出ることもあります。
カイロプラクティックでは、残念ながら変形した膝関節の形状を元に戻すことはできません。
しかし、膝関節に足りない動きをしっかりとつけ、痛みを起こしている組織に負担のかかりにくい環境を作ること。また痛みという感覚は神経系がコントロールしていますので、それに対してアプローチすることで痛みを軽減、進行を遅らせることは十分に可能だと考えられます。
オスグッド・シュラッター病
10~15歳の活発な発育期の子供に多い膝の障害です。症状は、膝蓋骨(膝のお皿)の下にある脛骨粗面に強い痛みが起こり、外見上も膨隆したような形状になります。
これは、膝を伸ばすような運動を繰り返し行うことで、骨盤から走る大腿四頭筋→膝蓋骨→膝蓋靭帯→脛骨粗面へと強い牽引力が伝わり、成長段階の脛骨粗面の軟骨が炎症を起こしたり、遊離してしまうことにより起こります。
この場合、治療の第一選択は安静となります。
カイロプラクティックでは、大腿四頭筋の柔軟性を高め、脛骨粗面への牽引力を和らげます。また、大腿四頭筋に関与する骨盤や股関節へアプローチし、大腿四頭筋への過負荷を防ぎます。
その後、テーピングやストレッチ、自身でのアイシングの方法などを指導し、炎症部位の回復を促します。
タナ障害
膝には、「タナ」と呼ばれる胎児期に一時的にできる滑膜ヒダというものがあります。これは成人の約60%が胎児期の遺残として存在していると言われています。
この滑膜ヒダが、膝の屈伸運動で大腿骨と膝蓋骨(膝のお皿)の間で繰り返し挟まれることにより、傷ついたり肥厚することにより膝を動かした時に引っ掛かる感覚や痛みが出現します。
カイロプラクティックでは、膝の正しい関節運動を取り戻すように関節のアライメントを調整します。また、拮抗筋(膝の場合、伸ばすのは大腿四頭筋、曲げるのはハムストリング)のアンバランスを調節することにより、膝にかかる負担を和らげます。
前十字靭帯・内側半月板受傷後の膝痛
前十字靭帯は前方向へのすべりと捻じれを防ぎ、内側半月板は膝のクッションのような枠割を果たしています。これらの組織の損傷は、コンタクトスポーツや急な方向転換が必要なスポーツ(バスケットやスキー)をする方に多くみられ、膝に捻転のストレスがかかることにより、発症します。これらを痛めてしまうと歩行時に膝がガクッと膝が崩れてしまう膝崩れや運動時の痛み、膝関節可動域の制限、大腿四頭筋の委縮などがみられます。
治療の第一選択は、保存療法ですが、スポーツ選手や日常生活に支障のある方は再建手術をされる方もいます。
カイロプラクティックでは、残念ながら伸ばされたり断裂してしまった前十字靭帯、損傷した内側半月板を元に戻すことはできません。
しかし、膝に負担をかけている腰部・骨盤、股関節、膝関節、足関節、それに関与する筋肉をトリートメントすることで、下半身全体の調和性をとり、前十字靭帯や内側半月板に負担の少ない、動かしやすく安定感のある膝の状態にすることでお役にたてると考えています。